2021年09月17日
どのようなものか
遺言執行者は、その任務を開始したとき、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。
1.遺言執行者の通知義務
旧法には、遺言執行者が就職した事実や遺言の内容を相続人に通知すべき旨の明文の規定は存在せず、遺言執行者から通知がないことに関して、相続人(特に非受益相続人)との間でトラブルになるケースもありました。
もっとも、遺言内容の実現は、遺言執行者がない場合には相続人が、遺言執行者がある場合には遺言執行者がすべきことになりますので、遺言内容及び遺言執行者の有無について、相続人は重大な利害関係を有しています。
そこで、遺言執行者がその任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならないものとされました(民1007A)。
本規定に基づく遺言執行者による通知は、その有無が遺言執行の効力とは無関係であるものと考えられますが、遺言執行者が遺言内容の通知を怠れば、善管注意義務違反を問われるおそれがあります。
2.通知の対象
本規定は、遺言執行者がない場合には遺贈等の履行義務を負う立場にある相続人を保護することを目的として、新たに設けられました。したがって、遺留分の有無に関わらず、全ての相続人に対して通知すべき義務を負うことになります。
一方で、受遺者は履行義務を負う立場にはないことから、本規定による通知の対象とはされていません(部会資料17 ・ 22頁〜23頁)。しかし、改正後の民法1012条2項の規定により、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができるものと定められました。
これにより、遺言執行者の就職の有無について、遺贈の履行を求める立場にある受遺者もまた、重要な利害関係を有するものといえます。
他方で、遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちに遺贈の履行に着手しなければなりません(民1007@)。したがって、法律上の義務でこそありませんが、遺言執行者が就職を承諾した際には、受遺者に対しても、遅滞なく通知をすべきであるものと考えられます。
3.通知の内容
通知の内容については「遺言の内容」と定められているのみであり、その方法については特段の定めがありません。例えば、遺言書の写しを添付して通知する方法によることなどが想定されます。
なお、遺言執行者に就職したこと自体については、条文上、通知すべき内容として明記されていません。これは、遺言執行者が就職を承諾した場合には、直ちにその任務を開始することになる(民1007@)とともに、通知義務も任務の一環であり、就職を承諾していることは当然の前提となるためです(部会資料24-2 ・ 27頁)。
4.経過措置
本規律は、施行日前に開始した相続に関して、施行日以後に遺言執行者となる者にも、適用されます(改正法附則8@)。
・遺言執行者に就任した際に課される通知義務
・遺言執行者の権限と注意点
・遺言執行者の復任権に関して
・特別財産承継遺言(不動産)
・特定財産承継遺言(預貯金)