預貯金債権又は預貯金以外の金融商品について
特定財産承継遺言がされた場合には、それぞれ遺言執行者にはどのような権限が付与されるか


預貯金債権について特定財産承継遺言がされた場合には、原則として、遺言執行者は預貯金の払戻しや預貯金契約の解約の申入れをする権限を有することが明確にされました。これに対して、預貯金以外の金融商品について特定財産承継遺言がされた場合には、遺言執行者の権限はなお遺言の解釈に委ねられることになります。

1.預貯金債権について
改正後の民法1014条3項により、特定財産承継遺言の対象となる遺産が預貯金債権である場合、遺言執行者は、対抗要件具備行為のほか、預貯金の払戻しを請求でき、また預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合には、当該預貯金契約の解約の申入れを行うことができることが明確にされました。
ただし、遺言執行者は、払戻しの「請求」や解約の「申入れ」をする権限を有するにとどまり、強制的な解約権限を有するものとはされていません。したがって、例えば定期預貯金であって履行期が到来していないときには、金融機関は、当該請求又は申入れに応じるかについてなお裁量を有しているものと考えられます。

2.預貯金以外の金融商品について
これに対して、特定財産承継遺言の対象となる遺産が預貯金以外の金融商品である場合の遺言執行者の権限については、様々な性質の金融商品があり、一律に規定を設けることが相当でないことから、改正法に規定は設けられませんでした。
このことは、反対解釈として預貯金以外の金融商品について遺言執行者の解約払戻し等の権限を否定するものではなく、遺言執行者の権限の有無は、なお遺言の解釈に委ねられることになります。

アドバイス
民法1014条3項の規定は、預貯金債権を目的とする特定財産承継遺言がされた場合における遺言執行者の権限を定めた規定であり、預貯金債権の遺贈がされた場合については適用がありません。
また、既述のとおり、預貯金以外の金融商品についての遺言執行者の解約払戻し等の権限の有無については、なお遺言の解釈によることになります。したがって、これらの場合には、遺言者がその遺言において、遺言執行者に預貯金等の払戻し権限等を付与する旨を明記しておくことが望ましいものと考えられますので、遺言書を作成する際には留意する必要があるでしょう。