遺留分に関する権利行使の効果を、金銭債権が発生することとしたことにより、実務上考慮をしなければならないポイントはどのようなものがあるのか


遺留分権利者の立場からのポイント

遺留分の主張の方法
遺留分権利者の立場からは、そもそもどういう方法で遺留分侵害額請求権を行使すればよいのかというのが気になるポイントです。これについては旧法下での実務と同じく内容証明郵便等の方法で、遺留分義務者に意思表示を行うことで行使することになります。{民四頒@}。
この意思表示は形成権の行使であり、必ずしもこの意思表示の段階では具体的な金額を明示して行う必要はないと考えられています(一問一答124頁)。

期間制限について
遺留分侵害額請求権の行使については、旧法と同じく短期の期間制限が設けられており、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈を知った時から1年間という消滅時効の期間と、相続開始の時から10年を経過したときという除斥期間が定められています(民1048)。
遺留分侵害額請求の行使により発生した金銭債権の消滅時効は、通常の消滅時効にかかります。すなわち、債権法改正の施行後においては原則として5年間の消滅時効にかかることになります(債権法改正後民166@一)。
 
遺留分義務者が金銭債務の履行を行わない場合
遺留分侵害額請求権を行使しても、遺留分義務者が金銭債務の履行を行わないことも想定されます。特に遺贈や贈与の目的物が不動産等の非金銭財産であった場合には起こりがちでしょう。その場合遺留分権利者としては、最終的には金銭請求訴訟を起こしていくことになります。遺留分義務者が、それでも支払を行わない場合には、遺留分義務者の財産について差押え等を行うことになります。

遺留分義務者の立場からのポイント

遺留分義務者の立場からのポイントとしては、金銭の支払が行えない場合どうすればよいのかということでしょう。手元に現金が無いにもかかわらず、金銭の支払請求を受けるというのは、心理的にも負担が大きいことであります。
裁判所には、金銭債務の支払につき、相当の期限を許与することを求める制度が設けられています(民1047D)。