遺留分制度に関して、どのような改正がなされたのか?


遺留分制度の改正点は大きく分けて二つです。
1.遺留分に関する権利の行使の効果の金銭債権化
2.遺留分に関する計算方法の見直し及び明確化です。

(1)遺留分に関する権利の行使の効果の金銭債権化
 改正前においては、遺留分に関する権利の行使の効果は、物権的効力が生じるとされ、遺留分権利者から遺留分義務者に対する権利の行使により、遺贈等の目的となった財産が遺留分権利者と遺留分義務者の共有となることがありました。改正法では、社会情勢の変化に対応するため、遺留分に関する権利の行使により発生する効果を、遺留分権利者から遺留分義務者に対する金銭債権が発生することとしました(民1046@)。遺留分に関する権利行使の呼称も「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」に改められました。
 事業承継を考える当事者としては、自社株やマンションなどの事業の継続に関わる重要な財産についてはヽ遺留分侵害額請求に対する資金手当てをおこなえば承継がさせやすくなったと言えます。

(2)遺留分に関する計算方法の見直し
遺留分の計算方法の見直しについては、大きなものは被相続人から相続人に対する生前贈与があった場合における見直しです。改正前においては、被相続人から相続人に対して特別受益に当たる生前贈与があった場合には、当該生前贈与がどれだけ昔になされていたものであったとしても、遺留分算定の基礎財産に含めるとされていました(最判平10・3・24民集52・2・433)。これでは、コツコツと事業承継のために生前贈与を行っていきたいという人にとって、意欲を持つ妨げにもなります。そこで改正法では被相続人から相続人に対する特別受益に当たる生前贈与については、原則として相続開始前10年間にされたものに限り遺留分算定の基礎財産に含めることとされました(民1044B求Bこれにより生前贈与が活発化する可能性があります。